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欧州トップ15リーグに所属する日本人選手の“出身クラブ”から日本サッカーを分析する

海外挑戦が当たり前になりつつある日本サッカー界。現在すでに数多くの日本人選手が国外でプレーしているが、その中でもトップレベルのリーグに所属する選手にはどのような傾向があるのだろうか。UEFAリーグランキング15位までの国に所属する68名の選手を分析し、日本から海外のトップリーグを目指す道筋を考えたい。

※2部までの選手に限定。また、U-23以下のカテゴリーに所属している選手は、2部以上に所属する場合を除き対象外としています。

目次

二大日本人拠点のベルギー・ドイツ

まず、今回リサーチ対象となった68選手の国別人数分布を整理する。

図にも表れている通り、2017年にDMMがシント=トロイデンVVを買収したことを契機に日本人選手が倍増したベルギーと、3部リーグ以下も含めると最多の日本人選手が在籍するドイツが、ヨーロッパにおける二大拠点と言えるだろう。

この国別人数分布を見ると、ぱっと見「日本人が評価されやすい国と評価されにくい国があるのか」と感じるかもしれないが、最も大きな影響を及ぼしているのは“外国人枠ルール”だ。

外国人枠の考え方が基本的にゆるい(見方によってはほぼ影響がない)ベルギーやドイツのような国に比べ、就労ビザ制限が強すぎるイングランド、EU圏外選手の獲得ルールが厳しいイタリア、コトヌー協定によりACP諸国(アフリカ・カリブ海・太平洋諸国)が恩恵を受けやすいスペイン・フランスなど、仕組みの影響で“挑戦しやすい国”と“挑戦しにくい国”が存在する。

将来、海外のトップリーグでプレーする目標を掲げているのであれば、各国の“外国人枠ルール”をしっかりと理解した上で、どのようなステップで目標を実現していくのかを考えておく必要があるだろう。

王道はJユースからのトップ昇格

ではここから、海外トップリーグでプレーする日本人選手の「出身クラブ」を分析する。

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まずは中学時代の所属クラブから。

Jクラブのジュニアユースに在籍していた選手が6割と割合こそ多いものの、高校・大学年代と比べて、街クラブ・中体連の出身者も多い印象。

特に、高校以上のカテゴリーと比べて、U-15のカテゴリーは各地域に根ざした街クラブが発展している傾向があることも大きな要因の一つだろう。

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次に高校時代を見てみると、傾向が顕著に表れ始める。

Jユースと高体連で二分する形に見えるが、日本のプロサッカー全体でJユース・高体連の出身者割合がほぼ同率であること、人数制限のあるJユースに比べて高体連の選手数は多いこと、などを加味すると、Jユース出身者が海外トップリーグへ挑戦する割合はかなり大きいとも言える。

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最後に、高校卒業後の進路について見てみよう。

ここまでくると傾向は明確で、海外トップリーグで活躍する選手の大半は、高校卒業後にJクラブへ加入していることがわかる。

また、特筆すべきは海外へ挑戦する選手の割合が多いこと。高卒でのJクラブ加入が叶わなかった選手は大学へ進学するイメージがある中、高卒時点で海外へ行く選択肢も持つべきなのだろう。


現在、Jリーガーの約4割は大卒選手だ。しかし分析結果が示す通り、海外トップリーグでプレーする選手に限れば、8割が高卒から国内外のプロの道を選んでいる。将来どこを目指すのかによって、進路選択の最適解が異なるということだ。

年齢の重要性

出身クラブ分析から得られる最大の考察ポイントは、“年齢”についてだ。海外トップリーグでプレーする選手に大卒者が少ないのは、まさに年齢の影響だと言えよう。

  • 日本ほど大学スポーツが発達していないヨーロッパでは、「20代前半の選手」=「プロクラブで数年経験を積んだ選手」と考えるのが一般的であり、プロクラブでの実績を見て評価するのが当たり前。
  • ヨーロッパでは選手の売買によりクラブが利益を得るのが常識。だからこそ「将来的に市場価値の上がり幅が大きい選手」を優先して獲得しようと考える。
  • U-23・U-19などの若手カテゴリーが発達しているクラブが多く、プロクラブでの実績が乏しい選手は育成する前提で契約を結ぶのが一般的。

このような背景から、「年齢が若ければ若いほど選手を獲得するハードルが下がる」のがヨーロッパサッカーだということがわかる。言い換えると、22歳でプロ1年目を過ごす大卒選手にとって、トップリーグへの挑戦は非常に難易度が高いということだ。


もしあなたが将来、世界最高峰のリーグでプレーすることを夢見ているのであれば、「日本的なプロへの道筋」とは違う視点を持って、自分の将来を考えていく必要があるだろう。

この分析が、夢を目指す選手たちのヒントになると嬉しい。


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